「セコイ事しますね剛志さんって」

私は、お茶を入れながら、剛志に言う。
剛志は、苦笑いをしながら

「セコイかな?」と言った。

「セコイですよ。別に、こんなことしなくたって私、普通に話ししますけど?」

私は、ダージリンの紅茶の入ったカップを剛志に渡す。
剛志は、それを、ふぅ~っと冷ましながら、一口飲むと、ポケットから出したタバコに火をつけた。

「一応さ・・」

「一応?」

「うん、まぁ一応、俺、嫁さんいる身だしさ、おかしいじゃん?なんか」

「おかしい?なにがですか?」

「んー・・と、ほら、口実作らないと」

「口実?ですか?」

「うん、誰に見られてるかわからないし」

「ああ、疑われちゃうとって事ですね。まぁ剛志さん地元の人ですしね」

「疑われても、しょうがないと言えば、そうなんだけど」

「別に疑われたら潔白を証明してあげますよ私」

「あはは、そうか、じゃあ、いっか」

「でも、なんで話がしたいと思ったんですか私と・・・」

「何故だろうね」

「不思議ですね、わからないんですか?」

「うん、わからない。わからないけど、何故かそう思ったからさ」

私と剛志は、こんな調子で、意味もなく夜中まで語り、時折、スキーの話や、何気なく浩司の話にも触れてみた。

剛志は

「浩司とは、昔から知ってるけど・・俺、あいつ昔から嫌いだから、あいつの話はしないで」

と言った。