金融屋のメガネの男は、荒木の言葉に苦笑いを浮かべながら

「あんたに騒がれたら、なんだか厄介になりそうだよな。そんな気がするよ」

そう言って、万年筆のキャップを開ける。

「面倒な事に、わざわざ乗り込む気はないんでね。荒木さんと言ったっけ?あんたみたいな人が、この子にくっついてるなら、金の精算が終わったら、ちゃんと借用書も、ここで破って燃やしてあげるさ」

そう言った。

荒木は、カバンの中から白い大きめの封筒に入ったものを、テーブルの上にドンと置く。その封筒の隙間から、無数の1万円札が見えた。

金融屋の男は、その封筒を受け取ると、中から札を出し、数え始めた。

私は緊張から体がガタガタと震えだし、その震えを押さえるのが必死だった。

「荒木さん、枚数がちょっと多いみたいだけど?」

金融屋の男は言う。

「ああ、手切れ金みたいなモンですよ。どうぞ。収めてください」

荒木が、笑う。

手切れ金?借りた金額よりも多く支払うと言うのだろうか?
そしたら私も、多くのアダルトビデオに出演すると言う事だろうか?

聞いていなかった話に私は、一瞬、泣き出しそうな不安感に動揺してしまう。

すると荒木は、

「そう言えば、元々、この子の名前を使って、お金を借りに来た男はどうしたんですか?」

そんな質問まで投げかけた。

金融屋の男は言った。

「さぁ・・知らないね。

元々、この子名義の車を担保にって話だったし、この子の名前の印鑑も全部用意して金借りに来たしねぇ。

そういうヤツは、また、どっかで同じような手口で人の名義でも使って、金借りして生きてるんだろうよ。

うちも慈善事業じゃないからね。

借りたものは返してもらう、

なぁ、お嬢さん、これは筋だろう?

まぁ、心配したところで、そんな男は、そのうち、この世から勝手にフェードアウトしちゃうってもんよ」

そう言って荒木が用意した白い紙にサインをし拇印を押したのだった。