金融屋の事務所は、新宿の歌舞伎町を抜けた薄汚い路地に面したマンションの一室だった。そのマンションを見上げると、荒木は

「このマンションだったのか~、ここってヤバイとこだよね。相変わらず」

そう言って、マンションの入り口に向かう。

「ヤバイって何が?」

「まぁ、違法商売してるヤツらでも簡単に賃貸契約が結べるマンションってとこかな?」

「へぇ・・そうなんだ」

「俺らの商売とかでも、ヤバイやり方してるプロダクションって結構あるんだよ。例えば、外人の女を密輸してきて、AVに使ったりとか、未成年使ったりとか、あとは、本人には告げず、強姦とかリンチみたいな内容のAV撮影するとかさ。そういう、いつパクられてもいいような爆弾商売やってる事務所とか、このマンションは多いよ」

世の中の裏とでも言うのだろうか・・・

そういう人達に、まんまと騙されて、家に帰れなくなった女の子もいるのだろうか。

もしかしたら私も騙されてるのだろうか。

ドキドキした緊張感は抜けなかったけど、私は、妙に落ち着きを取り戻し始めていた。

もし、私が荒木に騙されて、荒木が今から会う金融屋とグルで、私が、このまま監禁されてしまって、どこか海外に売られたとしても・・・

今まで思いもしなかった、そんな妄想が頭をよぎる。

でも、いいんだ。もう、仕方ないんだ。

ここまで来てしまったから。

どうして私は、誰にも相談しないんだろう?

あなたは、一体、自分の力で何が出来ると言うのだろう?

もう1人の私が私に問いかけていたりする。

けれど、逃げ出そうとは思わなかった。

いや、逃げ出すことが出来なかった。

もし、騙されていたとしても、私、自業自得だから。