とはいえ、流石に難儀だった。

精鋭部隊と言われるだけの事はある。

俺が最も得意とする槍を以ってしても、全滅させるのにはかなりの時間を要した。

お陰でここに来るのが随分と遅くなってしまったし、俺自身も相当な傷を負ってしまった。

…肩に刺さった矢を引き抜きながら、俺は息を吐く。

「お、おのれ!!裏切りおって!!確実に勝てる方法などとほざいておったくせに、よくもぬけぬけと!!」

激怒する指揮官。

「人聞きの悪い事を言うな。まるで俺が嘘をついていたようではないか」

俺は笑う。

そう。

俺は『確実に勝てる方法』と言っただけだ。

どちらが、とは言っていない。

それを勝手に自軍の事だと解釈したのは指揮官の方だ。

それに。

「思い出せ。俺の二つ名は、なんといったかな…?」

「…裏切りの…真紅…!」

乙女が指揮官の代わりに言う。

だが、その言葉を発した彼女の表情に嫌悪はない。

むしろ、あの光り輝くような笑顔があった。

「さぁ、大詰めだ」

俺は槍を構えた。

「一掃するぞ、乙女!!」