傷だらけになりながら戦い続ける小国軍の騎士達。

数では圧倒しながらも、その実押されているのは大国軍の方であった。

死をも恐れぬその進軍に、少しずつではあるが後退し始める。

そしてその気迫に恐怖した者が…。

「ひ、ひぃいぃっ!!」

ついには逃亡し始めた。

…一人が逃げると、その恐怖は連鎖する。

一人、また一人と剣を捨てて逃亡する大国軍の騎士達。

…大国軍の騎士は数多いとはいえ、その殆どが強国の庇護を受けようと他国から移り住んできた者達だ。

いわば『守られる為の』騎士達。

小国の騎士のように、国を『守る為に』戦っている訳ではない。

故に己が身に危険が近づけば、あっさりと戦いを放棄して逃亡してしまう。

いまや十一万からいた大国軍は、半分以上が戦死、または逃亡していた。

およそ五万。

「堕ちたものだな、大国も」

私は剣を握り締める。

「な、何を、まだだ!」

大国の指揮官は叫んだ。

「こちらにはまだ、紅が率いる精鋭部隊がおるわ!満身創痍の今の貴様らに、精鋭部隊は相手出来まい!!」