「槍隊、距離をとれ!絶対に間合いを詰めさせるな!!」

襲い来る大国軍の騎士達を相手しながら、私は愛馬を巧みに操りつつ指示を出す。

…小国を出た途端、敵兵は雲霞の如く押し寄せてきた。

三万の自軍で抑えるには、十一万という大軍はあまりにも多い。

距離が殆ど詰まっている分、弓兵も思うように攻撃できず、戦局は我が軍の篭城戦の様相を呈してきた。

小国内に侵入しようとする敵兵を、槍兵と騎士は砦門前で、弓兵は砦の上からの矢で応戦する。

私と数百の兵が、敵の部隊に対して斬り込み役を買って出ていた。

しかし、やはり数の差は圧倒的だ。

「がはっ!」

一人の兵が矢を受けて落馬する。

「パトリック!!」

私は兵の名を呼ぶ。

そちらに気をとられているうちに。

「ぐあっ!!」

槍で突かれ、騎士が鮮血と共に倒れた。

「オリバー!!」

その二人だけではない。

たった一人の小国の騎士に対し、大国軍の兵士は五人、六人と徒党を組んで襲い掛かり、寄ってたかって刃を浴びせた。

多勢に無勢にも程がある。

「おのれ…おのれぇっ!!」

せめて、門を抜かれる事だけでも防がなければ。

私は懸命に剣を振るい、襲い掛かる大国軍を斬り散らした。