兵士の瞳は、澄み切っていた。

「我らはとうに覚悟は出来ています。大国の支配に屈し、屈辱の生を選ぶより、騎士として誉れ高き死を選ぶと…我らは皆、ヴァルキリーの騎士です」

「……」

そなた達は…。

たった一人の男に離反されてメソメソと泣くこの私を、まだヴァルキリーと呼んでくれるのか。

それを思うと、胸が熱くなった。

…そうだ、私は一人ではない。

たとえ紅には力及ばずとも、勇猛果敢かつ信義に厚い、このように頼もしい仲間がいるではないか。

「…全軍に通達!!」

私は表情を引き締めた。

「すぐに戦の準備を整えよ。いい機会だ。今度こそ戦乙女の軍の真の力を、大国軍に見せ付けてくれようぞ!!」

「はい!!」

私の命令を伝えに、兵士は走っていった。

「…………」

その後姿を、私は見つめる。

…紅。

貴方が勝利の為に捨てた騎士の誇り。

私は捨てぬ。

たとえ血にまみれようとも捨てぬ。

騎士の誇りと矜持を抱え、私は最期まで貴方に刃を突きつける。

それが戦乙女と呼ばれた、私の生き方だ…!!