戦を終え、小国へと戻ってきた私は、軍を率いて小国を取り囲む砦の門へと差し掛かる。

今日も兵達はよく戦ってくれた。

こんな年若い娘に追従してくれる兵達には、感謝の言葉もない。

物資の乏しい我が国ではあるが、酒と、食事とを存分に振る舞って、今日は鋭気を養ってもらいたい。

そんな事を思いながら、門を潜ろうとしていた時だった。

「乙女!!」

突然、進軍の後方から声が聞こえた。

思わず振り向くと同時に…それに気づいた。






風が吹いていた。

それは、赤い疾風。

何者をも薙ぎ倒し、何者をも切り刻む、闘気を孕んだ風。




その風は両手に刃を握っていた。

短剣(ダガー)よりは一回りほど大きな、片刃の肉厚の剣。

それを左右に握り締め、脇目も振らずに突進してくる。

…すぐにわかった。

狙いは他の誰でもない。

白馬にまたがり、軍の先頭にいる…この私だ。

悟るが早いか、私は腰の剣の柄に手をかけた。

風…疾風と見紛うほどの突進を見せた赤い外套の騎士が、馬上の私めがけて跳躍し、左右の刃を振り上げる!!

私は咄嗟に剣を抜き放ち、ギリギリのところでその刃を受け止める!!

ギィンッ!!と。

鉄と鉄のぶつかり合う音。

重い斬撃。

あと刹那でも遅ければ、私はこの男の刃によって頭を割られていたやも知れない。