…部屋の外から、見張りの兵達の声が聞こえる。

「…乙女はすっかり気落ちしてしまわれたな…」

「無理もない。あれ程信頼していた紅様が寝返ったのだ…」

「おいたわしや…あれ程活発で明るい性格の乙女が…」

「紅様…いや紅の奴め…恥知らずにも戦の直後に大国に寝返るとは…」






…今はその名は、聞きたくなかった。



ベッドにうつ伏せに横たわり、顔をうずめる。

シーツには…小さなシミがあった。

涙…?

私は泣いたのか。

隣国に勇名轟く、凛々しき戦女神ヴァルキリーたるこの私が、人知れずとはいえ、涙を流したのか。

…思わず自嘲する。

たった一人の男が離反した程度で涙するとは。

戦乙女の称号は最早返上だな。

私はすっかり、そこらの娘と同じになってしまっていた。