大国との戦が始まって二年が過ぎる頃には、甲冑にも慣れ、重い剣も羽根のように振るう事ができるようになっていた。

師と仰ぎ教えを乞うた騎士の剣の腕前もとうに超え、小国に私の右に出る騎士はいなくなっていた。

女だてらに騎士の真似事をする姫君。

そのような言葉を耳にしなかった訳ではない。

娘は娘らしく、城に閉じこもって震えていればよかった、と言われればそうなのかもしれない。

戦いは騎士達に任せていればよかったのかもしれない。

…私が非力だったのならば。

だが、私には力があった。

この国のどの騎士よりも高い剣技が身についた。

その力を使わずに隠れて震えている事など出来なかった。

この力は、神が与えたもうたもの。

両親の復讐の為に神が与えてくれたもの。

そう信じた。







…事実、大国との戦は拮抗していた。

勝ち戦が続く訳ではない。

戦とは生き物だ。

時には敗北を喫する事もある。

だが、小国の存亡にかかわるほどの大敗を喫する事はなく。

『姫君のお力添えのお陰で、大国とも渡り合える』

そのような言葉が、騎士達や民衆の間から聞こえるようになった。

姫君は戦いの女神。

小国を救う為に遣わされた戦乙女。

…いつしか私は、真の名よりも、姫君という肩書きよりも、『戦乙女』という二つ名で呼ばれることの方が多くなり、小国の戦乙女という名は、この地の遠くにまで及んでいた。