小国軍、大国軍共に、戦死者二万。

これが今回の戦の結果だった。

大国軍が撤退したのは、俺と乙女が戦後半から脅威的な力を発揮して、多くの敵兵を斬ったからに他ならない。

精鋭部隊二百のうち五十も斬られたとあっては、勝ち戦といえども損失が大きすぎる。

大国軍はそう考えたのかもしれない。

が、同じ二万の戦死者とて、決して引き分けではない。

五万のうちの二万と、十二万のうちの二万とでは、重みが違うのだ。

「…くそ」

乙女が歯噛みする。

エメラルド色の甲冑は返り血にまみれ、所々破損している。

乙女自身も、頬や腕に軽い傷を負い、傷以上に疲弊していた。

そして肉体以上に、精神を疲れさせていた。

二万もの同胞を失った。

心優しき戦乙女にとって、これ以上の苦痛があろうか。

…俺が察するに、今回の戦は兵数の差以上に精鋭部隊の投入が痛手となったのだと思う。

俺や乙女ほどの力はなくとも、一般兵を手玉に取るほどの剣腕があれば、十分に小国軍にとっての脅威となるだろう。

十の力を持つ者二人より、八の力を持つ者二百の方が戦力的には優位に立つ。