着替えを済ませ、自室に戻ってから、ベッドに仰向けに倒れた。

…体が重い。

疲れていた。

この疲れが戦によるものだけではないのは、明白だった。

…裏切りの真紅。

時勢が変わるたびに寝返る裏切りの騎士。

あれ程の剣腕を持ちながら、なぜそのような誇りなき行動をとるのか。

…命以上に大事なものなどない。

しかし、誇りを捨ててまで拾う命に、何の意味があるのか。

他者を踏みにじってまで生き延びる事に、恥は感じないのか。

…憤りが私の胸を支配する。

だが…。

心のどこかで、紅の言葉を信じない私がいた。

彼は本心を口にしている訳ではない。

あの捻くれ者が、私の前で素直に本心を口にする筈がないではないか。

彼はいつだって自信家で、皮肉屋で、心中を味方にすら見せぬ男。

その結果、幾つもの勝利を小国に導いてきた。

その心の内を見せぬのは、常にこの国の勝利を考えている為。

口にすれば勝率が下がる。

兵の緊張感が薄れ、そこから綻びが生まれる。

その為に時には偽りまで口にして、我らを鼓舞するのだ。

…そう…信じていたかった。