…愕然とする乙女。

代わりに俺が言葉を発する。

「寄らば大樹の陰、とはどこの国の言葉だったかな…実に素晴らしい言葉だ。強国、大国について何が悪い?生きる為に強者の庇護を受けるのは当然の事だろう?」

「し…しかし…」

「乙女、お前も騎士の誇りなどと謳うクチか?」

俺は呆れたように溜息をついた。

「誇りと引き換えに死ぬのか?その後、『あいつは最期まで騎士らしく、戦士らしく生き抜いた』などと…そのような誉れ、何になる?」

「ならば!!」

乙女は追い詰められたように叫ぶ。

「ならば紅、貴方はこの国も裏切るのか?裏切って、大国につくのか?」

「……」

俺は無言のまま。

…焦れたように、乙女が言う。

「貴方の過去がどうだろうと、私は責める気はない。過去の汚名をそそぐだけの働きを、貴方は既にしてくれた。だが…」

苦しげに俯く乙女。

その心中を代弁するかのように。

「今後の事などわからぬ」

俺は乙女に背を向けた。