今日も何とか、兵に大きな傷を負わせる事もなく戦を終わらせる事が出来た。

多少の傷を受けた者はいるものの、命にかかわるような大事ではないようだ。

疲労はしているものの、戦の勝利に笑顔を見せる兵達を見る度に、私は安堵の気持ちに包まれるのだ。

戦に勝った事に、ではない。

彼らが無事に生き残れた事に対してだ。






…私が15の時、大国は攻めて来た。

『軍門に下るか、このまま民衆と共に根絶やしにされるか選べ』

大国の王の言い草は侵略の宣言以外の何物でもなく、父もまた、そのような脅迫に屈する気など毛頭なかった。

…だから大国は攻めて来た。

火を放ち、弓を射り、槍で貫き、剣で薙ぎ払った。

騎士も、民衆も、王族も、男も、女も、大人も、子供も。

何一つ例外などない。

ただ略奪の為だけの侵略。

その略奪の中に、私の父と母の命もあった。

…私はただ、それを泣き叫んで見ているだけだった。

側近の騎士に守られながら、ただ無力にも父と母の死に行く様を見ているしかなかった。

あの時の事は一生忘れない。

忘れられぬからこそ剣を取った。

…二度とこのような悲劇が繰り返されぬように…などと綺麗事を言うつもりはない。

私の戦う理由は復讐だ。

無論、この国の頂点に立つ者として、国民を守る義務がある事はわかっている。

その義務も果たそう。

だが、私の中で何が一番にくるかと問われれば、私は『父と母の復讐』と答えずにはいられなかった。