「おかしな事を、敵か口走っていたものでな」

声が震えていた。

「おかしな事?」

紅が眉を潜める。

「ああ」

小さく深呼吸をしながら、私は言葉を続けた。

「何…敵兵の虚言だと思うのだが…紅にはもう一つの異名があるとか…それを知らずして召し抱えるとは、人が好いにも程があるとか」

そこまで言って。

『敵の虚言なのだろう?』と。

確認の為の念を押す事が、何故か私には出来なかった。

…紅の発言を、待ってしまった。

紅の口から、そんなくだらぬ嘘を信じたのか、と笑い飛ばして欲しかった。

しかし、彼は私の予想に反して。







「ああ…『裏切りの真紅』という二つ名の事か」






そう、己の不吉な異名を口にした。