負け惜しみだろう、そのような事は。

心の中で、そのように呟いてみる。

よくある話だ。

虚言やありもしない噂を敵軍に流布して動揺を誘い、軍に混乱を引き起こす。

それをきっかけにして軍の士気を下げる。

小賢しい心理作戦の一つ。

だが…。

小国の帰路で、私は言い知れぬ不安を覚えた。

紅を信用していない訳ではない。

我が軍の騎士達が、そんな見え透いた虚言に惑わされる訳もない。

…しかし、はっきりさせておいた方が後々気分が良いではないか。

一体何が狙いなのだろうとモヤモヤした気持ちのまま戦場で背中を預けるよりも、やはりただの虚言だったと安堵した上で共に戦う方がお互いの為だと思うのだ。

…そう、紅の無実を証明する為だ。

国に戻ったら、紅に問いただしてみよう。