口づけを交わした後、俺を見た乙女はワナワナと震える。

そして。

「無礼者!」

彼女は平手で俺の頬を打った。

いや、打たれてやった。

かわす必要もないほど、その平手は弱々しいものだった。

「やはり体術は必要だな。俺が指南してやろうか?」

「うるさい!!」

叫ぶ乙女。

しかしその顔はこちらには向けず。

耳は俺の外套と同じくらい真っ赤だった。

…俺はフッと笑う。

「そうか。必要になればいつでも言え。無償で教えてやる」

外套を翻し、俺は宴の間へと戻っていく。

が。

「ま、待て!待たぬか!!」

背後から乙女の声。

振り向くと、彼女はまだ俯いたまま、所在無げに立っていた。