まだあどけなささえ残る表情。

甲冑よりもドレスの似合いそうな華奢な体つき。

あの身で屈強な男達より強いというのだ。

小国の民衆が彼女を『戦乙女』などともてはやす気持ちもわからなくはない。

しかし、だ。

強さなど、風聞と実際に目にするものとでは隔たりがある。

俺も幾度が、この地で最強などと名乗る騎士と刃を交えてきたが、その実、俺の剣技に敵う者など誰一人としていなかった。

この姫君もそうなのではないか。

誉ればかりで実力の伴わぬ、一介の少女に過ぎぬのではないか。

…幸いにして戦乙女は甲冑をまとい、剣も帯びている。

戦いの準備は万端という訳だ。

「…どれ…試してみるか」

小高い丘を駆け下りていく。

狙うは乙女、ただ一人。

今の俺は、さながら上空より獲物を狙う空の王者、鷹のようであった。