実を言うと、このような宴は初めてだった。

大抵の戦の後は、野宿してその場で狩った獲物を丸焼きにでもして、皆で食す。

自由騎士は傭兵だ。

軍の兵士のような拠点を持たぬ者も少なくない。

雨風をしのげる場所ならば、そこがその日の住まいとなるような者達だ。

飢えた虎狼のように、食うものと…戦場を求めてさ迷う。

そういう生き方と代償に、俺は確実な勝利を選び、自由騎士となったのだ。

その生き方に不満はない。

しかし。

…無邪気な子供のようにはしゃぐこの国の兵士たちを見ながら、俺もこのような国に生まれていたなら、自由騎士にはならなかったかもな、と。

妙に感傷的な事を考えていた。

少し酔ってしまったのかもしれない。

「どうした紅、気分でも悪いのか?」

隣で乙女が俺の顔を覗き込む。

…戦から戻った乙女は、甲冑を脱いで着替えていた。

いつもの普段着代わりのドレスよりも、ずっと上等な生地を使ったドレス。

こういう衣装をまとっていると、この女がどれ程の可憐さ、美貌なのかがよくわかる。

特に今日は際立って可愛らしく、美しく見えた。