「今日は皆、本当によく戦ってくれた。傷を負った者、仲間を失った者、それぞれに悲しむべき事柄もあっただろうが…決してそれらは無駄ではない。その悲しみは、後の我が国の礎となる」

私は多くの騎士達の前で、グラスを片手に言葉を紡ぐ。

「…とまぁ、長々と私が話した所で、皆の耳には届くまい。既に料理と酒に心奪われているだろうからな」

そう言うと、宴の席に笑いが起こった。

「今宵は存分に飲んで食べて、疲れを癒してくれ。乾杯!」

私の音頭と共に、大勢の乾杯の声が重なる。

宴の間は、あっという間に笑い声と歓声に包まれた。






戦の終わった夜。

小国では、私が約束したとおり宴が開かれた。

…戦に勝った後は、皆に存分に酒と料理を振る舞うのだが、今日は豪華さが違った。

何しろ、大国軍七万の兵をわずか数百にまで追い詰めたのだ。

これほどの大勝は過去なかった事だ。

私とて少し浮かれたくなる気分なのだから、兵達はさぞかし気分が良い事だろう。

…この勝利は、彼ら一人一人の奮戦によって得られたもの。

そして死んでいったあの兵士、傷ついた兵士達の血によって得られたもの。

…我が軍の兵士、そして民衆は、湿っぽいのを嫌う。

だから弔う時でさえも、賑やかに、笑顔で送り出してやりたいと思うのだ。

精一杯騒ぎ、楽しむ事こそが、死んでいった兵への鎮魂となる。

皆、そう考えていた。