涙を拭い、乙女は立ち上がる。

「彼は、亡骸を国に連れ帰り、手厚く葬ってやってくれ…全軍帰還。よく戦ってくれた。ささやかながら、国に戻ったら宴を準備しよう」

乙女の言葉に、兵士達は喜びの声を上げた。

「…紅」

乙女は俺のそばに歩み寄ってくる。

「貴方にも随分助けられた。此度の戦の勝利は、貴方がいてこそ得られた。本当に感謝の言葉もない」

「そのようなものはいらぬ」

俺はフッと笑う。

「とりあえずは帰って腹いっぱい食って、浴びるほど飲ませてもらおうか。報酬の事は、その後ゆっくりと考えさせてもらう。無論、今後の大国との戦に関してもな」

「…承知した」

柔らかく微笑む乙女。

戦が終わり、気丈に振る舞う必要もなくなったせいだろう。

その笑顔は、年相応の娘の笑顔だった。