馬上から、乙女が俺を見据える。

見る者全てを射殺すと同時に魅了するかのような、凛々しい眼差し。

その眼差しのまま。

「どうする、赤い騎士。これ以上やるならば止むを得ない。ここからは命のやり取りになると知れ」

乙女は言った。

上からの物言いだが、彼女が相手だと清々しささえ感じさせる。

「……」

俺は苦笑いを浮かべ、左右の剣を地面に突き立てた。

…戦意を失った証明。

俺に最早、乙女と斬り合う気はなかった。

「乙女、その技量感服した」

「…なぜ私に挑んだ?」

世辞などいらぬ、とばかりに、乙女は本題を突きつける。

…可愛げのない娘だ。

笑顔の一つも見せれば、惚れる男などはいて捨てるほどいるだろうに。

「お前の実力を試したかった。隣国にまで知れ渡る、小国のヴァルキリー、戦乙女の剣の腕前をな」

「試してどうする?」

曇りなき眼で、乙女は俺の瞳を覗き込む。

心の奥底まで見透かすような、宝石のごとき瞳で。

…俺は、フッと笑った。

「乙女。俺をお前の傘下に加えぬか?紅の自由騎士が、お前の右腕として存分に働いてみせよう」