「ふぅっ…」
大樹さんのアパートの前に立つ。
大樹さんが現れませんように…っ。
バタバタと、靴の音が遠くから近づいて来た。
「…華乃…?」
………!
彼は後ろから現れてしまった…なんてタイミングなんだろ…。
「あ、あれ?大樹さん…。今、帰り…?」
平静を装う私。
「いや、バイトだったんだけど忘れ物して…華乃は?」
「今から駅向かうトコ…だよ。クラスでクリスマスパーティなの。」
そっか、って大樹さんはアパートに入って何かを取ってまた出てきた。
「じゃあなっ。俺急ぐから!」
「うん。気を付けてね…。」
大樹さんは小走りに行っちゃった。
寒いのにいつも通り手袋もしないで…
よ…良かったぁ…危なかった!
大樹さんが居なくなったのを確認をしてから、大樹さんの部屋の前に立った。
これを、手放しておしまい。
これでもぅ、一年前のあの日の私にさよなら。
私は紙袋を、ゆっくりと大樹さんの部屋のドアノブにかけたんだ。

