「ゼロッ!」 その掛け声と同時に、男は森脇の背中めがけて全力で走り出した。 距離にして、約20メートル。路面の水溜まりを弾く男の足音は、降りしきる雨の音に掻き消され、二人の耳には届いていない。 (よし、そのまま振り向くな!) そう祈り、握り締めたナイフの刃先を前方に向ける。 その距離、約10メートル。 5メートル。 3メートル。 2メートル。 1メートル。 (覚悟しろっ!森脇ぃぃぃっ!) そして、男が森脇の背中にナイフを突き立てようとした、その刹那───── .