獲物を狙う肉食獣のような鋭い目をサングラスの奥に潜ませて、その男は前を歩く森脇と前島の後を尾行していた。
フード付きの黒いレインコートの両ポケットに左右の手を突っ込み、やや猫背気味に歩くその男の手袋をした右手には、刃渡り約十五センチ程のナイフが握られている。
計画を決行しようと決めた今夜が、月明かりひとつ無い雨天であったのは幸いだった。
それに加え、雨で普段より街の人通りが少ない事も、この男に味方していた。
この繁華街を抜け、もう少し人の少ない通りに出た時が勝負だ。
失敗は絶対に許されない。
もし逃げ損なって捕まるような事があれば、自分は超人気ロックバンド《トリケラトプス》のメンバーを襲撃した犯罪者として、実名入りでマスコミに袋叩きされるのは目に見えている。
男は、前を歩く森脇と前島をサングラス越しに憎悪に満ちた目付きで睨みつけながら、ぶつぶつと独り言のように呟いていた。
「大体、デビューした時から気に入らなかったんだ。
何が《天才ロックバンド─トリケラトプス》だ。
世間の奴らは買いかぶり過ぎてるんだよ!どいつもこいつもトリケラトプス、トリケラトプスって……
たいがい、目障りなんだよ、お前らは!」
.



