「ヤベエ~~!腕がパンパンだよ!」
大盛況のうちに、無事代役ステージを終えた森脇と前島の二人は、汗でびっしょりになった体をタオルで拭いながらカウンターのマスターのもとへと戻って来た。
「二人共、お疲れ様!」
マスターからは、労いの言葉と共にバドワイザーの瓶ビールが差し出される。
元々、二人はレスポールから今夜のステージのギャラを貰おうなどという考えは微塵も持ち合わせてはいない。それよりも、このキンキンに冷えたビールの方が今の森脇達にとってはよっぽど有り難い。
「いやあ、やっぱりライブの後のビールは最高!」
「全く、本当に素晴らしいステージだったよ。二人だけであそこまで演るとは、恐れ入った」
そんなマスターの賛辞に、森脇が少々照れくさそうに微笑みながら答える。
「いやマスター、正直いっぱいいっぱいでしたよ。ドラムなんて、あの曲数が限界です。やっぱり、ドラムじゃ森田にゃ敵わない」
それは、このライブを終えて思い知らされた森脇の正直な感想であった。トリケラトプスの正規ドラマーである森田 信人は、今の森脇以上のドラムワークをそれこそ何時間も延々と叩き続ける。
それに、観客は上手くごまかせても、武藤 謙三のベースが無い違和感は森脇も前島もしっかりと感じていた。
「じゃあ~マスター、俺達そろそろ帰りますんで、会計をお願いします」
慣れないドラムの演奏が余程堪えたらしい。森脇は、バドワイザーを飲み干すとマスターにそう告げた。
「会計なんて貰えないよ。むしろこっちがギャラを払わなきゃいけない!」
確かに、日本ロック界ナンバーワンのトリケラトプスのスペシャルライブである。たとえ二人だけと言っても、本来ならばかなりな高額のギャラが発生する筈である。
勿論、森脇達はマスターにそんなものを請求するつもりなど更々無いので、マスターに余計な気を遣わせない為に、二人は敢えて今夜の飲み代をタダにして貰った。
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