「お前、本気で言ってんのか?」
そう問い掛ける森脇の表情をどのように捉えて良いのか、陽子は判断に迷った。無茶を言うなと呆れている様にも見えるし、その一方でかなりの興味を抱いている様にも見える。
とにかく、説得あるのみである。陽子は、トリケラトプス出演予定のステージが局の命運を懸けた大切な番組最大の目玉である事、森脇を捜し出す為に何百という建設会社に電話を掛けまくった経緯、そして何より、トリケラトプスの復活を待ち望んでいるファンがこの日本にまだ数多く存在する事を森脇に熱弁した。
その陽子の話を、森脇は間に口を挟む事無く最後まで黙って聞いていた。そして、そんな森脇の様子に陽子は、もしかすると彼はそんなに無関心では無い、むしろ興味を抱いて聞いているのでは無かろうかと勝手に解釈した。
「………ですから、森脇さん!是非とももう一度トリケラトプスのメンバーで24時間ライブのステージに立っていただきたいんです!どうかお願いします!」
最後にそう締め括り、陽子は期待を込めた顔でじっと森脇を見つめ、返答を待った。
感触は悪くない。森脇は自分が話をしている間ずっと真剣な表情でそれを聞いていたのだから………答えは《YES》絶対そうに決まっている。
ところが………
「やなこった!」
「ええええぇぇぇーーーーーっ!」
森脇の口からこぼれたのは、陽子の想像とは正反対の答え。
「どうしてですか!黙って聞いてらしたから、私てっきり引き受けてくれるものだと………」
「話を聞く約束だったから、聞いてやっただけだ。誰も引き受けるとは言ってねぇだろうが!」
「そんなあ~~~!」
森脇は陽子の要請を、あっさりと切って棄てた。
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