デビュー前のトリケラトプスが、なんとこの《レスポール》のステージに立っていた。
現在、トリケラトプスの消息を必死になって捜している陽子にとって、これは衝撃的な事実であった。
もしかしたら本田は、最初からその事を知っていて、陽子をこの店に誘ったのかもしれない。
いや、絶対そうだろう。だとしたら、回りくどい事をしないで最初からそう言ってくれればいいのに………
本田からの愛の告白を、ほんの少しでも期待していた自分がまるでバカみたいではないかと、陽子は嬉しいような悔しいような複雑な思いで胸がいっぱいになった。
「それじゃあマスター!もしかしてトリケラトプスの現在の居所とか知ってたりします?」
陽子はカウンターから身を乗り出す勢いで、マスターにその事を尋ねた。
「私達、どうしても彼等に会わなきゃならない用事があるんです!お願いします、知っていたら教えて下さい!」
だが、それに対するマスターの答えは陽子の期待を満足させるものでは無かった。
「ヨーコさん、教えてあげたいのはやまやまだが、実は私も彼等の居所は知らないんだよ………」
マスターの答えに、陽子はがっくりと肩を落とした。
「なんだぁ……マスターでも知らないのかぁ………」
なまじ期待していただけに、そのマスターの答えに対する陽子の落胆ぶりは大きかった。
.



