「おい、一体どうなってんだよこれは!」
突如として、武道館の全ての照明が消え、真っ暗になっていた。
「本田さんよ、これもアンタの演出なのかい?」
「違いますよ!何だこれは、停電しているのか?」
トリケラトプスの登場まで、あと数秒。そんなところで起きた突然のハプニング。インカムで状況を確認する本田に、スタッフからの応答が返って来た。
『本田さん、落雷です!武道館のすぐ近くで落雷があり、この近辺一帯の送電が一時ストップしているとの事です!』
この日の夕方頃から発令されていた《大雨、雷警報》はまだ解除されておらず、運の悪い事に落雷による停電は、この武道館のライブに大きな影響を与える事となった。
「わかった。誰か東電に復旧の見込みを問い合わせてくれ。それから、客席がパニックを起こさないように拡声器で呼び掛けを頼む!」
スタッフの指示を与えると、本田は天を仰ぎ大きなため息をついた。
暗闇で姿は見えないが、恐らくそこに居るであろうトリケラトプスのメンバーに今の状況を知らせる。
「落雷だそうです。復旧の見込みは今問い合わせていますが………すみません、これからって時に………」
「まったく、ウチのバンドはホントに武道館と相性が悪いみてえだな」
以前、トリケラトプスの武道館公演が台風で流れた事を引き合いに出して、森田が呆れたように呟いた。
「しかし、送電が復旧しなかったらどうする?いつまでもこのままって訳にはいかないだろう」
「五分~十分であればこのまま待機しますが、それが限界だと思います。さすがに観客をそれ以上待たせられません」
「それまでに復旧しなければ、ライブは中止って訳か………」
「そうせざるを得ないと思います」
武藤の問いかけに、本田は悔しそうに答えた。電気が来なければライブどころでは無い。いくら本田でも、こればかりはどうしようも無かった。
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