時刻は午後4時。
24時間ライブが始まってから、七回目の観客の入れ替えが行われると、ステージを取り巻くスタッフの緊張感は一気に高まった。
それは、この後にある二組のビッグアーティストの登場を控えているからであろう。
トリケラトプスの出演交渉を陽子に任せ、その他ほとんどのアーティストとの交渉を受け持ってきた本田だったが、恐らくこの後に控えるアーティスト達との交渉が一番苦労したに違いない。
その、第八グループのステージを担当するのは………
日本人ソロ・ロックアーティストとして初めてこの武道館公演を成功させた、武道館と言えばこの人。
江沢 永吉
観客総数七万五千人、桜島オールナイトコンサートで日本中を驚かせた男。
奈良渕 剛
普段はテレビなどあまり出演する事の無いこの二人のビッグネーム。
この二人をライブに引っ張り出す為に、本田は約一ヶ月の間毎日のように彼等の事務所へ足を運び口説き続けた。
その甲斐あって、ようやくこの24時間ライブへの出演の了承を得る事が出来たのだ。
故に、彼等のステージは特別で、演奏時間も他のアーティストの倍、勿論ギャラも倍、そして忘れてはならない。会場の警備員の数も倍である。
何故、警備員を倍にしなければならないのか?
それは、この会場を埋め尽くすファンの顔ぶれを見れば分かる。
皆さん、恐らく昔、地元ではさぞかし《やんちゃ》で名の通ったであろう腕自慢の熱いファンの方々ばかり。スタッフの緊張が高まるのも、なんとなく頷ける。
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