ヒット・パレード




ライブの滑り出しは順調、熱狂的なファンの声援を浴びながらTKB48は立て続けにヒット曲三曲を歌いきった。


「みんな~ありがとう~~~!」


TKBの華やかなステージに、興奮醒めやらぬ観客席。その観客席の最前列から三列までは、出番をまだ迎えていないアーティスト達やその他の招待客がライブを鑑賞する為に設けられた特別席になっていて、その内のひとつには、TKB48の産みの親であり、有名作詞家でもある《秋山 康》の姿もあった。


さしたるトラブルも無く、無事にステージをやり遂げた彼女達の姿を客席から見上げ、腕を組みながら相変わらずのクールな表情で満足気に頷く秋山。


「やっぱり、若い娘達が沢山のステージは華があっていいですなあ~。秋山さん」


と、隣の席から秋山に話し掛けたのは、来賓として客席に招待されたとあるレコード会社の重役であった。


「ありがとうございます。なんとかトップバッターの役目をやり終えて、ほっとしているところですよ」


穏やかな笑顔を浮かべ、冷静に重役の話へと受け答えをする秋山。二人で暫しの間、他愛ない談笑が始まった。


「しかし、可愛らしい。実は私は《まよよ》のファンでね。ああ、何て言うんでしたっけ?おしメンと言うのかな?」


「よく御存知ですね。《まよよ》は先だっての総選挙でも一位を獲りましたからね……これからのTKBを背負って立つ大切なメンバーですよ」


そんな会話を交わし、再びステージに目を向ける。すると、もう予定の楽曲を歌い終わり次の《エクササイズ》にバトンを渡すはずの彼女達が、まだステージ上に立っていた。


「おや?まだ何か歌うのかな?
秋山さん、聞いてますか?」


「いや、何も聞いて無いですけど……」


不思議な気分でステージを見つめる秋山。どうやらアンコールという訳でも無さそうである。


マイクを持っているのは、先程も話題に出た《まよよ》こと渡辺 麻夜だけだった。しかも、その《まよよ》の表情は緊張に震え、何かを思い詰めている様に見えた。



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