ヒット・パレード




トリケラトプス解散後、武藤は現役中に稼いだ金を資金にして小さな中古外車販売店を立ち上げていた。


元々、車好きがこうじて道楽で始めた店であったが、思ったより経営は良好であり、この界隈ではそこそこ名の通った中古外車販売店である。


「やっと、その気になってくれた訳だ」


「ま、そんなところだ」


商談スペースのソファに腰掛け、話を始める森脇と武藤。


森脇は、テレビNETの24時間ライブの開催、そして、そのメインのゲストとしてトリケラトプスがオファーを受けた事を武藤に話した。


「なるほどな……話は分かった。だが、ギターはどうする?」


当然とも言える武藤の問いに、森脇が少し歯切れが悪そうに答える。


「実はまだ決まっていない。今、テレビ局の方で腕のいいギタリストを捜してもらっているところだ」


「おいおい、本気か?腕のいいギタリストったって前島ほどの奴は見つかりっこ無いぜ」


「分かってるさ。そこまでの奴は期待していない、あくまで代役は代役だ」


その台詞を聞いて、武藤は森脇の言葉の本意を確認してみたい衝動に駆られた。返答しだいによっては、森脇の事をぶん殴ってやらなければならない。


「なんだか、昔お前が出した結論とずいぶん違うんじゃねぇのか?
トリケラトプスは、前島抜きじゃ考えられない。だからお前は解散を結論付けたんだったよな」


森脇の部屋で武藤と森田を集めバンドの解散を告げた時、森脇は「俺にはどうしても、この結論しか出せなかった」と、二人の前で頭を下げたのだ。


年月が経てば、人の気持ちも変わる。もしも、このトリケラトプス復活の理由が死んだ前島を軽視するようなものであれば、武藤は森脇を断じて許す訳にはいかない。


それを確かめようと、武藤は次の森脇の返答を待っていた。



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