「……………。」



「李斗…?」



「ああ、ごめん、
ちょっとやりかけてたことに
気を取られてた。



マグボトル買ったかったってか?」



「う、うん…。」



「秘密。」



「へ?」



「ひーみーつーっ!」



「えーーっ!!!
何でよお!!!
教えてくれても
いいじゃんかあああ!!」



「またいつかわかるよ。」



「へ?」



「んじゃな!!」



「う、うん。
あ、おやすみ、李斗。」



ー何気無く言ったこの言葉、
だったんだけど…、



「………ああ。
おやすみ、朔。」



「!!!」



ープツリ、と切れた電話、
だけど、大きな衝撃を与えた。



何アレ何アレ何アレ!!!



李斗の、
『おやすみ』って、言葉が、
まるで今の今まで
傍にいたかのように近くで、
そして、私の名前の呼び方が、
あまりにも優しくて
耳に残った。



『おやすみ』と言い合えることが
どれだけ幸せか
ということを感じた。



「李斗…、あの囁き方は
反則すぎるよぉ…。」



ー誰に聞かれることもない
独り言を呟いて、
私はベッドに倒れこんだ。



李斗の“いつかわかるよ”は、
数年後、わかることになるんだけど。
今の私には、知る由もない。ーーー