だけど、李斗は、
過去の呪縛に囚われて、
心から信頼して、
人を好きになるーということが、
できなくなっている。



だから、俺は李斗が、
自分で行動を起こすなんて、
絶対にできないと思ったんだ。



ーだから、確認を込めて
澤詰に一度話を聞いたみた。



『汐梛朔って、人を裏切ったり
する人間ではない?』



ーと、訊くと、澤詰は、



『あんな
素直な純粋な子はいないよ。
真っ直ぐで、むしろ、
人に騙されても
信じちゃうような子だから…。
素直だし、一生懸命だし、
女の友だちからは慕われてるね。』



『へー、そーなんだ。』



『何何???
深津、朔のこと気になんの???』



楽しそーにそう言う澤詰に
少々腹立って。



『俺じゃ、ねーよ。』



ーと、言ってしまった。



『え、ちょっと待って。
アンタじゃないとすると…、



…ひょっとして、
冷血王子様?』




李斗って、確か、
そんなニックネーム
付けられてたな。



『………。』



沈黙が答えだと
わかってしまったみたいで。



『マジかー…、
あの“冷血王子様”がねー、
あの朔をねー。』



ーと、澤詰は、一人ごちていた。