「ようこそ。私は夢の国の案内係のようなことをしているイルマと申します。」
突然話しかけてきたその男は眉目秀麗を絵に描いたような好青年だった。
「はあ……」
扉と男の出現に、明日香は戸惑いを隠せなかった。
夢の国?ああ、例の探偵の。
来ようとは思わなかったのだけれど。
夢の国というのは眠るだけで無条件にたどり着く所なのだろうか。
「まあ。そうですね。こちらが案内状をお送りした人はその日、この世界へ来て頂いてますね。」
男の苦笑混じりのつぶやきに明日香は目を見開いた。
「は?…え!?」
今口に出して言ったか。
何で私の思考が分かる…?
「まあ夢の中なんで…。貴方が思ったことは全部分かってしまいます」
ニコニコと、さも当然のようにそう言う男に対して、明日香はもうこれ以上に驚くことはあるまいとため息をついた。
「私から貴方の思考は分からないのに?それって理不尽。」
「すみません。」
1欠片も申し訳無さそうでないイルマの言葉。
「もういいけど。で?ここが夢の国なの?」
「いいえ、正確には手前です」
振り返りつつイルマが視線を向けたのは扉だった。
「この奥です」