「寝たね。そろそろ行かないと。」
モニターを見ていた茶髪の男は立ち上がった。

何万人もが同時に映る巨大モニターがあるだけのだだっ広い空間。
男の動作で生じるかすかな衣擦れの音でさえもが音として認識されるような静かすぎる空間だった。

「…なあ、ほんとにコイツにすんのか。」
少し離れた所で寝転んでいた、帽子を顔に乗せた男が不満そうな声を出す。その呟いたような小さな声も響いた。

「もう案内状を出してるんだ、いい加減諦めたらどう?じゃあ、行ってくるから。」

「…俺は帰ってる。」
「はいはい。」


茶髪の男は、寝転んだ男を横目に微笑みとともに次の瞬間消えた。