「これ、君のでしょう?」
そう言って少年は麦わら帽子を差し出した。
 


 「すいません」と軽くお辞儀をすると少年が描いている絵に目が行った。



美しい街の絵がそこにはあって、すぐにすぐに本当の町に目をやる。



さっきまで顔をひきつらせていたのに真顔になる。

ーー私は人生で初めて一目惚れをしたーー



 「あの、」「うん?」少年は絵を描く手を止めて顔を覗いてきた。

 


 「もう少し、ここにいてもいいですか?」
 



 少年は微笑んで小さなベンチをずってくれた。




 どれくらいたっただろう。


私たちは黙ったままだ。



少年はさっきまで鉛筆でささーとスケッチをしていたのに、気がつけば筆に持ち替えて、それに色を塗っていく。

 白い世界に水色を何度も重ねていた。