今ではこういうの、リベンジポルノっていうらしいね。


世の中の大人たちは

問題だ、問題だ、

騒ぎ立てるのは好きなくせに


知ることから始めよう、


とか、低い目標。


あんたたちは知らない。



あたしがどれだけ弱いニンゲンか。

フケツ。キタナイ。ヘンタイ。キモイ。

その行為に対していろいろ言葉を投げつけられるけど




ばれなければその言葉はあたしに刺さらない。



箱の前にいるあなたの、

本当の顔も名前もわからない。



どんな顔でどんな気持ちでその行為を強いて、

その画面を見たの?



あたしは何も考えていなかった。


あなたが満たされてあたしを褒めてくれるから。


誰かが自分のしたことに反応してくれて


それも、喜んでくれて


そのうえ、褒めてくれて


歪んだ、ウレシイ気持ちであたしもみたされた。











最初のうちは、そんなもの送ったら拡散されるんじゃないかとか


知り合いに見つかるんじゃないかとか


心配してたけど、


さみしい、16のあたしはマヒしてた。



歪んだウレシイ気持ちにしがみついた。



「女」の使い方を知った。










ニンゲンっていう生き物は刺激に慣れやすい。


新しい刺激を求めたがる。



あたしもニンゲンだったらしい。




一歩踏み込んだあとは、どんどん先へ進んだ。







でも、会うのはこわくて踏み出せなかった。



携帯やパソコンを乗り越えて

ヒトとヒトとして

絵文字とよく似た表情どうしで会える気はしなかった。



どうせこの人たちも面と向かってあたしを見たなら


存在を否定するだろう。


そう思うとこわくて、箱の前のニンゲンたちと会おうとは思わなかった。




刺激に慣れることを我慢できても


新しくて強い刺激を跳ね除けることはできなかった。











先へ進む、その結果、


毎晩誰かと電話するようになった。


褒めてくれる人たちにも嫌な奴と好きな奴がいて


そいつらの反応に振り回されて落ち込んだり舞い上がったりしていた。


ある時出会ったあの人はあたしを心配してくれた。


誰でもいい。なんでもいい。いいから、電話して。相手して。


そう言って箱の中をさまよっていたあたしを捕まえて


真面目に仕事してる人のくせに、朝方まで話を聞いてくれた。



こんな人もいるんだ。



ほんの少し、歪んでないウレシイ気持ちも手に入れることができた。




歪んでないウレシイ気持ちはあたしの中ではすごくすごく大きくてあったかくて




会いたいとか好きだとか何度も言ったり



泣いてみたこともある。






あの人は現実の中をきちんと生きている人だから、


会いたいよ、好きだよ、


あたしに合わせてそうは言ってくれても



でも、卒業して、勉強も受験もおわって、それからじゃないとあえないよ。







あの人は現実を生きていた。





あたしが面倒だったのかもしれない。



急に連絡が途絶えた。



あたしはあの人のおかげで現実の世界に戻りかけていたのに、


あの人を頼りすぎてまた歪んだ箱の中に入ってしまった。




毎晩、光る画面とにらめっこしながら


あと何秒待てばあの人から連絡がくるはず



あと何分待てば

あと何時間まてば

あと何日


繰り返しては、朝がきてしまうまで泣いた。


あたしの中では強くて大きな支えを失って、


あの人に会う前よりもずっと、深くへ、


手も足も伸ばして、全身で飛び込んだ。














誰か、会おう。




誰か。