いつこんなことを始めたのかうろっとは覚えてる。

16の頃、さみしくて仕方がなかった。


さみしくてさみしくて仕方がなかった。


誰かに必要とされたかった。


空気よりも軽く


水よりも硝子よりも透明で


誰の目にもうつらない自分を仲間外れにしたかった。


勝手に抱いた疎外感で


勝手に押しつぶされてただけ。


自覚してるそんなこと。


でも誰かがあたしを透明にしているんだと思って、


自分が悪い、変わろう


なんて素敵なセリフと共に蝶になれなかった。



サナギにも幼虫にもなれず

自分のからにこもっては人を恨んでいた。


現代の生み出した、閉鎖された空間に飛び込んだ。



興味本位で見知らぬ人とパソコンの中で話してた。


顔を知らないその人には、どんな自分も作り出すことができて


そのうちそんな機械の箱の前であたしを待ってくれるようになって



あたしはもう少し小さな機械の箱を手にいれて


知らない人をトモダチと登録した。




毎日、毎日



パソコンの中で知らない人とおしゃべりして、



知らない人のアドレスをケータイにいれて



増えていく電話帳をみて


心を満たしていた。








でもそれは、



透明な硝子のコップに



透明な水をそそぐようなもので




透明には変わりなかった。




自分の薄っぺらさにはなかなか気づかなかった。



知らない人の名前で埋まった電話帳はあたしをいっぱいいっぱいにみたしてくれた。


それからしばらくすると


今までしがみついていた現実たちが唸り始めた。



あたしはイイコ



だった。



親のいうことを聞いて


親の手伝いをして


ガッコウのセイセキがよくて


トモダチのたくさんいる



イイコだった。




トモダチ



これにだけはあたしは嘘をつけなかった。


いうことを聞く


そんなもの誰にでもできる。



手伝いをする


少しやって放っておいてもやったうちにはいる



セイセキがいい



もし悪くてもあー言ったりこー言ったりすれば、良いってことになる











トモダチ




どんなに


何をして楽しかった

何をしたのが面白かった


何をするのが悲しかった


言っても



自分がその輪にいなくては



あたしの心は満たされなかった。




機械のはこの中で



透明な硝子のコップの水中で



溺れてもがいていた。







昼間はきちんと働く人や


ぐーたらしてる大学生なんかしか


パソコンでチャットなんかしてないし



奴らにも日常があるわけで



つまり、夜中にしか箱の前にいられなかった。



つまり、あたしも夜中に箱の前にいるしかなかった。





昼夜逆転ってやつ



面白いくらいに勉強がわからなくなったと思う



わからないことに気づかないくらい



テスト前の一夜づけの記憶力がよかった。



いや、ここは笑って



結果、イイコがイイコでいられなくなった。



取り繕えなくて、親に文句を言われた。




生きていく中で充足していた居心地の良い家の中が



飛び出したくなるくらいにトゲトゲした空間になった。



遊んでる


おかしくなった


とりつかれてる



半分笑いながらそんな皮肉を並べられることで



余計に箱やコップの深い底に手を伸ばした。




あるとき



自分が女だったことに気がついた。




好奇心とさみしさと居心地の悪さ


いろんなものにひっぱられて甘い言葉にのった。
















写真、送って。