夕焼けに染まった公園で、小さい男の子と女の子が話をしている。
よくある、大人になったら結婚しようというやつ。

「僕絶対大人になったら君を迎えに行くから。そしたら、結婚しよう?約束だよ。」

「うん、約束。待ってるね。」



ずっと、待ってるね。


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「…んー、朝」

鳥の鳴く声で意識を取り戻し、ゆっくりと目を開ける。カーテンの隙間から差し込む光にすこし目を細める。

また同じ夢を見た。
小さい頃からずっと見続けている夢。
前までは年に4、5回程度だったのだが、高校生になってからはほぼ毎日のようにこの夢を見ている。私はこんな素敵な約束なんてしたこともないけれど、もちろん憧れる。

「私もこんな約束をしていたら、迎えに来てくれる王子様がいたのかな」

いやいやと首を振って、学校の支度をはじめる。


秋友 光(あきとも こう)。あきもとひかるとかひかり、と名前を間違えられてしまうことがコンプレックスなのだが、回数が多すぎてもう慣れてしまった。歳は16、高校1年。もうすぐ2年になる。



母が作ってくれた、美味しい朝食を食べ終えて家を出た。

「わぁっ、天気いいけど外は寒いなぁ…。手袋してくればよかった。」

口から白い息がでている。凍える手でマフラーを口元まで引っ張った。