好き、好き、大好き。
湯煎にかけたチョコレートが、段々溶けていくのを見届けながら彼の顔を思い浮かべる。
大好きだよ、会えないけど学校も仕事も頑張って。
心の中で応援する。気持ちも一緒にチョコに溶け込めばいい。
そして彼に届けばいい。
彼以外にはどうでもいい。私の義理チョコを貰った人は可哀想だ。
自分へなんて一欠けらも込められていない、ただ甘いだけのチョコレート。
他の人を思って作ったちょこれーと。
気がつくとは思えない。だけど、やっぱり差を感じてしまうはず。
だって、他の子たちが渡す本命とは明らかに違う。
大好きは彼のもの。愛してるも彼のもの。
さっき届いたメールに明日、放課後会える?とメッセージを添えて。
絵文字にキスマーク。
私からの一足早い贈り物。
部屋の、ローテーブルに置かれたプレゼントも一緒に。
あなたに会いに行くよ。


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