「バレンタイン?」
「そう!アンタは誰にあげるのーって皆、気になってるよ。」
「えー。」

お菓子を摘みながら唇を尖らせる。
一斉に視線が集まった気がするけど気にしない。

去年の学園祭、目の前、椅子の上に胡坐を掻いている友だちのミッちゃんに勝手にエントリーされたミスコン。
まさか優勝するとは思わなかったし、それ以来告白が絶えない。

そのお陰で嫉妬されるのはちょっと嬉しいけど、うかつにデートも出来なくて、色んな意味でミッちゃんめ!

「私があげるのは一人だけでしょー。本命、は。」
「義理あげるの?」
「モチロン。だってね、嫉妬してくれちゃうもん。」
「バカップル。まぁ、明日は一応チョコ全員分持ってくるのよ?」
「え?義理って一個じゃない?本命作ってる途中で余ったチョコで作るんでしょ?」

シレッと言ってみせた私に、信じられない、とミッちゃんが驚いた声を出す。


「それだとアンタ、もろ本命よ?!」
「渡すときに義理だよって言えば大丈夫!」
「それでもねぇ・・・。」
「あげるのは誰にしようかなぁ。」


呆れた表情をみせるミッちゃんに私は、楽観的に笑った。