私の虚勢の壁に、小さなヒビが一本、短く浅く、入った。

壁は強く、まだまだ壊れそうにはない。
それでも彼の言葉は私を喜ばせた。
檻に閉じ込めた想いが膨らむ。





「信じてるよ。」


柚月くんは大学生だ。

だけどただの大学生ではない。
ちょっと世の中の黒いことにも手を染めてしまった、トクベツな男の子。


自分の会社を立ち上げ、都内の有名大学に通い、私にさえ言えないことを沢山してきている。



どういう形で稼いだとはいえ、彼は紛れもないセレブだ。
雑誌に特集を組まれるほど。
それに加えて甘いマスクの美男子。
世の女性たちが放っておくはずもなく、彼も年がら年中告白されている。
ストーカー被害にすらあったことがあるそうで。


だから、不安になる。
彼に何かあったら、私は壊れてしまうから。
愛している分、怖くなってしまうから。