「どうぞ」


カチャ、と音を立ててテーブルにおいたのは、ガラスのティーポットとカップのセット。

それから、砂時計。



「砂時計?」


木下先輩が不思議そうに尋ねる。



「はい。砂が全部落ちたら、紅茶の出来上がりです。」

「へぇ、可愛くていいね」

「ポットやカップもちゃんと温めてから使うんです。ここにこだわりたくて私が紅茶担当になったんですよ」



料理はそこまで得意じゃないけど、紅茶だけは昔から上手いって褒められてたから。



「ちなみに、悠先輩の好きなアールグレイです」

「ん・・・」


あれ?
なんか悠先輩の様子がおかしい?

じーーーっと砂時計を見つめて、心ここにあらずって感じ。



悠先輩の視線の先で、
サラ・・・と、最後の砂粒が下に落ちた。



「出来ましたね。じゃあ、どうぞ」



私は2人のカップに紅茶を注ぐ。

温かい湯気がアールグレイの香りを放ちながら、ゆっくりとカップへと落ちていく。



「良い香りだね。いただきます」


そういうと、木下先輩はそっとカップに口をつけた。
でも、悠先輩はじっとカップを見つめて動かない。



「先輩?どうしたんですか?」


猫舌だから?
でも、そこまで熱くはないと思うんだけど・・・


「いや、うん。いただきます・・・」


そう言って、悠先輩はカップに口をつけた。



どきどき・・・


悠先輩の感想・・・


何て言ってくれるかな・・・?






コク・・・

喉を紅茶が落ちていく。




「・・・・・・・・」




「・・・・・・・・・この味だ」







え・・・・・?





ボソリと呟いたその言葉は、きっと木下先輩には聞こえてなかったみたいだけど、悠先輩の反応を伺っていた私の耳にはハッキリと聞こえた。




いま、

--------この味だ



・・・って、言った???