「こんなトコにいないで、早く迎えに行った方がいいんじゃないですか?」



柳が俺に言う。
随分余裕があるんだな。



「お前、美晴の事好きなんじゃないのかよ」

「好きですよ。でも今日は俺撃沈だったから。
ライバルにエールでも送ろうかなって。」



あっさり言いやがった。

“好き”とか、俺がなかなか口に出せない感情を、堂々と口に出来る柳が羨ましい。



しかも、俺の事をライバルと。



「ライバル…かよ…」



後輩なのに、ムカつく奴なのに。

ライバル認定されたのが嬉しいような、恥ずかしいような。



すると、柳はクククっと悪戯っぽく笑った。



「会長、引っかかりやすすぎですよ。
認めちゃいましたね、美晴ちゃんの事好きだって」


「!!!」



なんだよコイツ。
誘導上手すぎんだろ。




ちくしょー。

一番には、美晴に伝えたかったのに。




ポケットからブブブと振動が伝わる。

美晴からの着信。



「ほら、早く。 行かないなら僕が行っちゃいますよ。」



俺は飲みかけのカプチーノをそのままに、席を立った。



「行ってくる!」



変なヤツだけど、良いヤツだな。



「ありがとな、柳」

「別に。明日からはまたガツガツ行くんで」



俺は柳を店に残し、学校に走った。