すぐ後ろからどす黒い声が聞こえてくる。
ゆっくり見上げると、そこには思いっきり睨んでいる西園寺我立っていた。
西園寺が私を後ろから抱きしめてくれたから壁にぶつからなくて済んだみたい。
それにしても西園寺の顔が恐すぎる。
彼女達は返す言葉もなく、泣きそうな顔をしていた。
「なぁ?俺の婚約者に何してんだって聞いてんだよ!」
「こ、婚約者?」
「この女、西園寺様の婚約者なんですか?」
初めて西園寺の”婚約者”の言葉が耳に入ったのか、驚いてるみたいだった。
「てめぇらに答える筋合いはねぇ。
それよりお前ら、西園寺を敵に回すのを覚悟で唯那に手を出したのか?なぁ?」
「め、滅相もございません。
西園寺様を敵に回すなんてそんな…………」
後から聞いた話だけど、ここの学園の生徒の実家の会社のほとんどが西園寺との取引があり、彼を敵に回すということは会社が潰れるということらしい。
「まぁ、今日は怪我してねぇみたいだから大目に見るが、次こいつに手ぇ出したら居場所はないと思え。」
「は、はい!」
彼女達は一安心したのか、その場に座り込む。
「行くぞ。」
西園寺は抱きしめる手を緩めると、左手を握ってその場を立ち去った。

