昔のプロポーズは未来に向けた約束だったけど、今は違う。
このプロポーズは約束を実現するためのものだった。
だから、私の中での答えはとっくに決まっていた。
「私を西園寺のお嫁さんにしてくれるの?」
私は涙を拭いてから、西園寺の目をしっかり見てあの頃言った言葉をそのまま伝える。
すると、西園寺はあの光景を思い出したのか、フッと笑みを見せる。
「…………あぁ。俺のお嫁さんは唯那以外は有り得ないから。」
それは、西園寺が12年前に言ってくれた言葉だった。
こんなにも前のことなのに、西園寺は忘れるどころかずっと覚えていてくれた。
プロポーズの言葉も、私が忘れていた気持ちも西園寺がきちんと覚えてくれていたから、こうして私はまた思い出すことができた。
そして、過去とも向き合えることが出来たんだ。

