俺はすぐに唯那を追って外に出たが、唯那の姿はなかった。


その代わりに女がぞろぞろと俺の周りに集まり黄色い声を上げる。


だが、俺はそいつらを無視してやっとのことで人混みを抜ける。


「あいつ、どこに行った…………」


俺はとにかく手当たり次第探してみる。
学園内はすげぇ広いからきっとまだ中に居るはずだ


でも、さっきのって……俺のことを思い出したってことでいいんだよな。
久しぶりに、懐かしいあだ名を呼ばれて驚いているうちに唯那が走って行ったから確認はしてないけど、多分俺のことを思い出してるはずだ。


だが、俺は思い出してくれたことより、その後の結那の涙が目に焼き付いていた。


ひょっとして、俺の記憶と一緒に何かの記憶に蓋をしていたってことか?


それなら、俺の前から居なくなった唯那は記憶を閉じ込めないといけないくらい辛い思いをしてきたのか?


それが婚約を解消したいという唯那の言葉に結び付くのか?


どっちにしても、今の不安定な唯那を放っておいたらまずいな。


俺は唯那にどんな過去があっても受け止める覚悟はもう出来てる。
だから、婚約解消なんてマネ、絶対にさせねぇ。
とにかく一刻も早く探し出さねぇと。