私は台本通りに目を覚ますけど、言葉にしたのはセリフじゃない。


王子様。って言うはずだったのに気付けば夢で女の子が呼んでいた名前が出て来た…………


龍くん……………それは、私がずっと好きだった人の名前。


でも、私が思い出したのはそれだけじゃない。


「お父さん………」


今までずっと自分で閉じ込めていた記憶が、一気に頭の中に入ってくる……………


私の目からは沢山の涙が溢れていた。


「唯那?どうした。」


泣いている私を見て、西園寺は心配そうな顔をしている。
でも、今の私には見えていなかった。


私の様子を見た舞台袖のクラス委員が急いで幕を閉じた。 


私は気付くと過呼吸の状態になっていて正常な呼吸が出来なくなっていた。


「唯那!大丈夫か?!!」


西園寺は慌てて私の身体を支えるけど、私の目から涙は止まらない。


「………私には、西園寺の婚約者になる資格なんかない!!」


そう言うと私は走って体育館から飛び出した。


「唯那!!」