「あぁ、セリフ覚えるの大変だぁ!」


家に帰ると私は夕食前にお風呂に入り、あがってからはベッドにもたれかかりながら今日渡されたばかりの白雪姫の台本を読んでいる。


白雪姫は主人公だからか、台本に書かれているセリフのほとんどが白雪姫。


だから、白雪姫は常に舞台に立ってないといけない。
休む暇もなくセリフを言い続けるって大変なんだろうな。


それに、西園寺の王子様は準主役みたいな感じなのに出るのは最後のシーンだけ。


なんなの?このずるさ!
人を主役に選ばせといて、自分だけはこんな楽な役に回って。


「ちゃんと覚えてるか?」


西園寺はノックもせずに入ってきて風呂上がりのバスローブ姿で入ってくる。


「ちょっと、勝手に入って来ないでよ。」


「まぁ、いいじゃねぇか。」


そう言って私の所に歩いてくる。


「今に台本読んでるけど、何であんたのセリフはこんなに少ないのよ!」


「それは脚本を作った奴に言え。」


そう言うと、西園寺は私の隣に座りどれどれと私の持っている台本を見る。


その距離が短くて、私はドキドキしてしまう。


「ちょ、西園寺。そんなに近付かないでよ。」


「何、顔赤くしてんの?」


そう言って西園寺は私の顔を覗き込む。
だから、そうやって顔を近付けるとドキドキしちゃうんだって!!


「バカ西園寺!そんなに覗き込まないで!」


私は西園寺の胸を押し返す。でも、男の子の力に適うはずがなくて、逆に近付けられてしまった。